#1 Magic Backpack

High Speed Turn

Michael:マリア!早く後ろに乗れ!
Maria:やっぱり、こうなるのよね!
バイクのマイケルの背中に張り付きながらマリアは叫んでいた
銃声がまた響き、彼らのすぐそばを通りすぎる

Michael:文句なら後からいくらでも
 聞いてやるから今は黙って僕に捕まっていてくれ
 いいか、絶対頭をあげるなよ
あらためてマイケルに言われなくても、そうせざるを得ない状況に
いることはマリアにも十分過ぎるほどわかっていた
答えるかわりにマイケルの腰に回したマリアの腕に力が加わった

Michael:行くぞ!
2人を乗せたバイクは逃げるのではなく、銃声のする方向を突っ切って進んだ
身体の側を銃弾がかすめて行った
あんたって、ほんと災難を招く天才だわ・・・
マリアは目を閉じマイケルに、しがみついていた
銃声が、だんだん遠ざかっていく
楽しい休暇の始まりのはずが、いきなり発砲に遭遇した2人には
まだ安全だと思えなかった

森に入ってから、どのくらい走りつづけたのだろうか
背後から誰も追ってくる気配は感じられない
突然、マイケルがバイクを止めた
夕闇の中、森は不吉な予感を漂わせ静まり返っていた
Michael:もう大丈夫そうだな・・・
 悪い・・マリア降りてくれないか
Maria:何?どうするの?
 まさかこんなところに置き去りにしないわよね!
マリアが降りるとマイケルは木の側にバイクを止めパワーで小枝と木の葉を集めて隠そうとしていた
パワーの青白い光が薄暗い闇を照らしだしていたが、なにか様子が違っていた
Michael:ダメか・・悪いけれど、どうやら限界みたいだ・・
そういうまもなくマイケルはバイクの側に崩れ落ちた

Maria:どうしたのよ、マイケルあんた、もしかしてケガしていたの?
 あんたって、なんでいつも
 ギリギリまで何も言わないのよ!
 マリアはマイケルの側に駆け寄った
Maria:マイケル!ねぇマイケル聞こえてる!
マリアはマイケルの身体を揺すった
 こんなところで勝手に死なないでよ!
Michael:まだ死んじゃいない
 あのなぁ・・人を勝手に殺すな
Maria:冗談言っている場合じゃないでしょ!
 さっきので、どこか撃たれたの?
Michael:痛っ!
マリアがマイケルの右脚に触れるとマイケルがうめいた
マリアの手のひらが湿っていた
Maria:やだ血が出てるわよ
マリアは急いでジャケットを脱ぐと彼の傷を押さえた
Michael:それ、気に入っていたんじゃないのか
横たわるマイケルが力なくつぶやいた
Maria:そんなこと言える口があるなら大丈夫ね
 だけど、どうするのこのままじゃホントに・・
Michael:あぁ・・やばいな
 マリア500mくらい先に行くと小さなロッジがある
 僕たちが行こうとしていた場所さ
 ここからだったらお前・・1人でいけるよな
Maria:なに言ってるの!
 あんたをこんなところに置いて1人で行けって言うつもり?
 あんたと違ってあたしはそんな薄情者じゃないわ!

でも銃で撃たれた傷をどうすればいいのかなんて、あたし知らない
もう、どうすればいいの・・病院にだっていけないわ
輸血できるのだってあんんたち4人だけじゃない
傷口を押さえているジャケットの湿気がどんどん増していく
それと共にマイケルの顔が青白くなっていく
こんな時マックスがいてくれたら・・そうだわ!マイケルに、だってきっと出来るはず!
でも今の彼にどれだけパワーが残されているか・・
不安を振り払うようにマリアは首を振った
だけど、今はそれしか方法を思いつかないわ
Maria:こんなとこで、のんびり寝ている暇があるなら
 自分の血ぐらいさっさと止めなさいよ!
 そしたらご希望どおりヨレヨレの宇宙人なんて
 ほったらかしにしてロッジでもなんでも
 1人で行ってやるわ!
 あぁ、せいせいするわっ!!
Michael:言いたい放題だな・・だけど無理だよ・・
 僕がパワーをコントロールできないのは知っているだろ
Maria:リバー・ドッグの脚は癒せたんでしょ
Michael:だけど、お前の車は壊した・・おぼえていないのか?
Maria:だったらケガして弱っているくらが、ちょうどいいはずじゃない!
 なんでもいいから早く試してみてよ
 つべこべ言い訳して本当は自信がないのよね!

沈黙の時間の中にマイケルの怒りが感じられる
いいわよ、どんなにイヤな奴だって思われたって平気
あんたの残っている力を引き出せるなら、あんたの命を救えるなら
あたしはなんだってする
マリアは溢れそうな涙をマイケルに見られないように拭い、マイケルが起き上がるのに手を貸した

Michael:いいか、頼むから・・・これで僕がどうなったとしても
 一人でロッジに行け
 マックスに連絡して助けにきてもらうんだ
Maria:心配しなくても、そうするわよ
答えるマリアの声が震えていた
いくら涙を見せまいと頑張っていたって鼻が赤くなっている
マイケルはマリアの気持ちに気がついた
Michael:力を使い果たす前に言っとくよ、ありがとう
 忘れるな、必ずロッジに行け
そういうと自分の脚の傷に意識を集中させた
パワーの光が安定せずに揺らめいている
傍らのマリアが無言でマイケルの手を強く握り締めた
『あんたのパワーそんなものなの?』 チクショー、あいつのそんな声が聞こえてくるようだ
マイケルが気力を振り絞って再び意識を集中するとパワーの光が増した
そして突然、スイッチが切られたように消えた

マイケルは再び地面に倒れこんだ
Maria:マイケル!
マリアは闇の中、手探りでマイケルの身体を探した
彼の胸に耳を押し当てると、鼓動が聞こえた
次にケガをした脚の方に手を伸ばすと湿気は乾いていた
Maria:マイケルやったわよ!
マイケルから返事がないことも、気がつくまでしばらくかかることもわかっていた
それでも静けさの中にマリアの安堵感が広がっていった
目が闇の色に慣れてくるとマリアは涙で濡れた頬を拭い、自分のバックパックを引っ張ってきた
あんたたちは地球の病気には感染しないみたいだけど
傷をそのままにしておくわけにはいかないでしょ
災難マグネットとジェーンのバックパックはコンビなのよ
答えてくれなくてもかまわない、マリアは1人話し続けていた
そうしていないと自分がくじけそうになりそうだった


出発3日前*Crashdown

Michael:休暇は僕の計画どおりにする、いいな
Maria:わかってるわよ
 どこへ行くかは聞かない
 計画に文句をいわない
 ドレスの必要なし、荷物はバックパック1個分だけ
 他になんかあったっけ?
Michael:移動は僕のバイクだ
Maria:シャワーを浴びられることを祈るわ
 やっぱりジェーンのバックパックにしなきゃだめね
Michael:なんだそれ?
Maria:一つくらいは楽しいことがあるって期待するわよ
 もっとも、あんたがいっしょなんだから、無理だと覚悟しておいたほうが気が楽かもね
Michael:人を疫病神みたいに言うな

マリアはバックパックからタオルにくるんだミネラルウォーターのボトルと懐中電灯を取り出した
Y字の小枝を2本探し地面に倒れないように立てると懐中電灯を載せマイケル脚が見えるようにした
頭いいでしょ マリアは答えないマイケルに向って語りかけた
傷を押さえていたジャケットを、こわごわよけるとジーンズに黒い染みが広がっていた
クシュン・・さすがにジャケットなしじゃ寒いわ
・・せっかく、乾いたのに濡らして肺炎の心配することまで、ないわよね
意を決したマリアはマイケルの靴を脱がすとマイケルのジーンズのボタンを外し
目をつぶってファスナーを下げた
意識のない男の子のジーンズを脱がすなんて、ママが見たら卒倒するわね
ボトルの水でタオルを湿らせると彼の太腿の傷の血をそっと拭い始めた
慎重に繰り返し拭うと銃弾の傷跡が姿を見せ始めた
残っていたマイケルのパワーでは塞ぎきれなかったようだ
彼の脚に残る痕をやさしく撫でた 痛そう・・頑張ったんだねマイケル
また泣きそうだわ・・ダメ!まだしなきゃいけないことは、たくさんあるわ
マリアは次に救急セットと防水シートを取り出した
傷跡にガーゼをあて、医療用テープで固定した

防水シートを地面に広げ始めると難問題に突き当たった
あぁ、もうー1人でどうやってマイケルを動かすの!
あんたが前に高熱を出したとき、5人がかりで洞窟まで引きずっていったのよ
あたし1人じゃ・・
そうだ、あれの力を借りよう!
シートをマイケルの体の左側に滑り込ませるように差し入れると、マリアはバックパックの底から
取り出したものを持って反対側に駆け寄った
それをマイケルの身体の下に入れると精一杯の力で一度マイケルの身体を傾け手を離した

シューという空気の音といっしょに緑のAlienが膨らみ始め
マイケルの身体を防水シートの方向に押し出した
やったぁ!仲間が助けてくれたわよ
これもあんたとの旅には必需品なのかもしれないわね

マリアは2人の最初の旅、285号線を南に向かった日を思い出していた
マイケルを乗せたシートを少しずつ引っ張り、なんとか木陰の場所まで移動した
膨らんだAlien人形をマイケルの傷ついた脚の下のクッションにした

ふぅ〜もうダメ、あたしも限界よ〜
マリアはマイケルの横に倒れこんだ
汗びっしょりだわ
こんなに頑張った恩人なのに、きっと何にもおぼえていないんだわ、ズルイ奴よね
目を閉じたままのマイケルを睨んだ
着ていたものは、きっと泥だらけだろう
顔だって汗と涙でぐちゃぐちゃだわ
それでもマリアは満足していた
ボトルに残っていた水を飲もうと起き上がると、視界にマイケルが入ってくる
ほとんどあんたのために使ったんだから、これはあたしの分よ・・
マリアは自分にそう言い聞かせながら一口飲んだ
わかったわよ〜
いいマイケル、元気になったらお返しは絶対してもらうわ
マイケルの顔には疲労感がまだ残り唇が白く乾いていた
大丈夫よね、マイケル・・
マイケルの鼓動を、もう一度確かめた
彼の首の下に手を差し込み少し後ろに傾けさせるとボトルに残った水を
ゆっくりと彼に飲ませようとした
これじゃ無理よね・・地面に飲ませちゃうわ
貴重な水なんだから、ちゃんと飲むのよ
マリアは口に水を含み彼の唇を湿らせ少しずつ飲ませ始めるとマイケルの喉が動いた
よかった・・朝までぐっすりに眠ってね
今度は本来の目的のためにマイケルの唇にkissした
マリアは負傷した脚に触れないようにマイケルの左側に寄り添うように横になった
防水シートの残りで2人の身体を覆った
リズとマックスに電話しなきゃ・・迎えにきてもらわなきゃ
でも、もうクタクタ・・明日の朝・・
マイケルの胸に頭を乗せるとマリアは睡魔に白旗をあげた

= to be continued =


さぁ大事件の始まりよ!頑張るMariaは私のお気に入り!
ジェーンのバックパックから次に何が出てくるかしら?

*注*ジェーンは私の好きなLindaHawardの小説:"MidnightRainbow"のヒロインの名前
 誘拐された富豪の華奢なお嬢様なのに、全然らしくない逞しさがあってジャングルで
 冒険することになります
 元諜報部員グラントが助けにくるけれど、彼女のスーパーマーケット並のバックパックは
 何度も二人の窮地を助けるの 一匹狼的だったグラントが彼女を好きになるのは自然の成り行き?
 年齢は違うけれどCandyみたいな2人です
 興味のある方は本屋さんで立ち読みしてみたら〜