#2 Boy'sStrategyConference

High Speed Turn

Michael:いくら僕がフェスティバルに行かなかったからって他の奴を
 誘うことはないだろう!よりによってマーカスなんか・・
 マリアの唄なら何度も聞いたし、あの日はレースの決勝戦だったんだ
Max:勝ったのか?
Michael:結果は問題じゃない
 だいたい、あいつだって僕のレースを見に来たことだって一度もないぞ!


家に入ってきてから、ウロウロと動き回り1人でマリアへの文句を言い続ける
マイケルをマックスは唖然として見ていた
マイケルは、いつものように勝手に冷蔵庫からオレンジジュースのパックを勝手に取り出し
そのまま飲み始めた
Max:あのフェスには登場するときにエスコート役が必要だったのは聞いていたんだろう
グラスをマイケルに私ながらマックスが聞いた

Michael:・・・
Max:お前に何度も頼んだのに、口答えしない彼女に夢中でちっとも聞いてくれないって
 マリアは嘆いていた



Michael:はっ?
Max:お前のバイクのことだよ
Michael:聞いたような気もするけど・・
 だったらお前かアレックスに頼めはよかっただろ
 他のやつを引き入れることないだろ

Max:僕は最初から遅れる予定だったし、アレックスも出演することになっていたから
 打ち合わせで間に合わなかった
 他の奴ってマーカスはアレックスのバンドの仲間の一人じゃないか
 マリアが僕たちの秘密を打ち明けたわけじゃないだろう
 あれ、お前ひょっとして妬いてるのか?
Michael:バ、バカなこというな!なんで僕が・・・
 焼きもちはマリアの専売特許だ!

誰が見てもジェラシーだろ・・マックスは下を向きクスっと笑った
Max:マイケル、お前何しに来たんだ?
 マリアへの愚痴を僕に聞かせにか?
Michael:いや・・違うけど
 ・・・・・・・
我に返ったようにマイケルは天井を見上げた
そして、ため息に聞こえる深呼吸のあと一気に話し出した
Michael:来週の僕達の休暇のことなんだけど
 僕があいつの望むことをしているつもりでも
 最後はいつも怒らせて終わりだろ
 結局、僕には夢見るデートってのは無理なのさ
 だけど、フェスに行かないかわりに埋め合わせはするって約束していたし・・
 このままじゃまずいと思って
Max:で、真剣にお前らしい計画を考えたのか
Michael:あぁ、フレージャーの森で廃屋になっているロッジを見つけたんだ
Max:フレージャーの森って・・何をしに行ったんだ、お前?
 まだ、あそこに何かあると思っているのか?
Michael:いや、そんなんじゃないよ
 ローリーがトゥーソンに帰って1年だろ
 なんか、ちょっと懐かしくなって・・・
 気まぐれにレースの帰りに寄ってみただけだ
Max:彼女はお前にとって肉親みたいなものだからな
 だけど・・
Michael:わかってるよ、ナセドのサインや誘拐事件やガンダリウムの巣窟や・・
 軍が接収したポールマン牧場跡、まだFBIが探っているかもしれないよな
 でも僕がおぼえている記憶は、みんなあそこから始まっているから懐かしい気持ちになるんだ
 他に思い出と呼べるようなものは何もないから

Max:わかるよ、そのロッジに行くつもりか?
Michael:マリアにも見せたいなと思って


見せたいのはお前の本心なんだろ
同じ仲間の僕たちにも本音を打ち明けずに肩肘張って強がってきたマイケル
僕がリズに秘密を打ち明けてから、何も隠さずにいられることの心地よさ・・
自由に呼吸を始めたように感じたように
マリアといっしょにいるときのマイケルが本当のあいつなんだと思える
ok、手伝ってやるよ

Max:それじゃ、まずはそのロッジの修理をしなくちゃな
Michael:手伝ってくれるか?
Max:当然だろ
 ただし、お前たちが帰ったら僕もリズを連れて行ってもいいか?
Michael:もちろん
Max:マリアの好きな色は?
Michael:は?
Max:だからロッジの内装はマリアの好きな色にしてあげるのさ
マイケルは無言で考え込んでいた
Max:お前、彼女の好きな色も知らないのか?
Michael:そんなの聞いたことなかったし・・
 だいいち、もしそんなこと聞いたら何かくれるのって言われるよ


Max:う・・ん、じゃあマリアに似合うと思う色は?
Michael:・・グリーン、あいつの瞳の色

ちゃんとわかっているじゃないの、マイケル
突然リズの声がして、二人はその場に固まった

Liz:ごめんなさい
 立ち聞きしていたわけじゃないのよ
 あまり真剣に話しているから声をかけそびれちゃったわ
 心配しないで、マリアには内緒にするわ
 そのかわり私にも手伝わせて
 マリアに内緒でマックスと2人こそこそしているとヘンに疑われるわよ
 マイケルが浮気しているんじゃないかと大騒ぎして
 手がかりを探しに、あなたのアパートに忍び込みかねないわ
Michael:まさか!
Liz:やるわよ、マリアなら
 でもマックスと私がどこへ行こうとマリアは気にしないし、あなたがレースだと言って
 1人で出かけるならマリアは諦めるでしょ
Max:そうだね
 せっかくの計画ならマリアを驚かせてあげよう
Liz:決まりね!
 マイケル、マリアの好きな色はアースグリーン
 森の色だから計画は間違っていないわ
 じゃあ、クラッシュダウンに戻ってアリバイ工作してくるわ!
 マックスあとで迎えにきてね

リズがウィンクして出て行った
マックスとマイケルは呆然としたまま見送った

Michael:・・・どういうことになったんだ
Max:うむ・・リズが手伝ってくれるらしいな
Michael:あ〜あ、僕たちって女の子に弱い種族なのかな?
 考えてたらマリアの親友が手を貸してくれるなら断ることもないよな

 なぁマックス・・森に行ったとき思ったんだけれど
 チャールズ・デュプリーが僕の遺伝子の提供者だとしたら
 お前やイザベルの遺伝子の提供者の子孫も、どこかにいるよな
 彼らは敵から狙われていないのかな・・

Max:敵って、ガンダリウムはお前が絶滅させただろ
 たぶん、彼らはどこか僕らの知らないところで静かに暮らしているんだろう
 厄介ごとに引き入れることはないよ
Michael:そうだよな・・・
 だけどガンダリウムの女王って1個体だけだったんだろうか・・
 女王蜂は1匹じゃないだろ
マイケルの独り言はマックスの耳には届いていなかった


Ψ into Frazier Woods Ψ

嘘だろ!
鳥のさえずりに目を覚ましたマイケルの視界に飛び込んだのは信じられないような光景だった
落ち着け! そうさ、僕はまだ悪夢の中にいるだけだ
マイケルは目覚めたはずの瞳をもう一度閉じた
思考を裏切るように朝の光とともに鳥の声が大きくなった
あぁ・・・どうやら違うみたいだ
マイケルは、もう一度片目だけ開けると自分が置かれている状況を
見回した やっぱり現実だ・・

昨夜、マリアと2人でここへ向かった
途中で誰かの銃撃にあって打たれて、どうにかここまでたどり着いた
 マリアの挑発に乗って、いや激励か・・自分の傷を治そうとしたことまではおぼえている
今、自分は防水シートに横たわり、マリアが胸の上で眠っている
目だけを動かしあたりを見回しすと更に信じられないような光景が広がっていた
ケガをした右足の側にミネラルウォーターの瓶と血に染まったタオル
救急セットが散乱している
しかもジーンズが脱がされ傷の手当てがされていた
ドキっとして眠るマリアに目を移した
ひょっとして、これ、お前一人でやったのか?
あれだけロッジに行けって言ったおいたのに・・
マリアの頬に涙の跡が見えた

どうして、そんな無茶したんだ
『あんたがあたしにとって、どれだけ大切な人なのか
 まるでわかっていないのね』
マリアの声が聞こえたように思えた

眠りつづけるマリアの起こさないように髪を撫ぜ頭に唇を寄せた
僕のために、また危険な目に合わせちゃったな・・ごめん

マイケル、行かないで・・・まだ夢の中のマリアが呟いた
マリアを思いっきり抱きしめたい衝動をどうにか抑えられたのは
風に揺れる緑のエイリアン人形と目があったせいだった

起きたら聞いてみよう
なんでこんなものまで持ってきたか・・
マイケルは微笑むとマリアの背中を優しく撫ぜつづけていた


マリア・・マリア
う・・・ん、もう少しだけ寝かせて・・

マリア!
もう、わかったわよ、ママ・・
あれぇ・・?

夢の世界から引き戻されたマリアは、そこが自分のベッドではないことに
やっと気がついた
目の前にいるのはマイケル 彼の姿がぼやけてきた
マイケルの手のひらがマリアの頬を包み、滑らせた指で彼女の涙を拭った
Michael:生きているよ、まだ幽霊じゃない
静かに彼女を腕の中に包み込んだ
マイケルの温かさに包まれマリアはようやく危機が去ったことを感じていた
Maria:・・異星人も幽霊になるのかな?
Michael:さぁな、どっちにしろ、まだなる気はない
 お陰で僕もどうにか動けそうだし、とにかくロッジまで行こう
 そこなら、ここよりゆっくり休める
 それに、この状況を誰かが見たらホラー映画の撮影中かと思われそうだ
Maria:殺人現場だと通報されるかもしれないわよ
 だけど・・脚、大丈夫?
Michael:血管と神経は、ちゃんと修理できたらしい
 ほら、ちゃんと動くよ
マイケルが傷ついた右足を動かすと応援のエイリアン人形がフワフワ揺れた

Maria:あっ・・あの、あんたのジーンズを脱がしたのは傷を手当てするためで
 べ・べつに、その下心があったわけじゃないから・・
マイケルが思わず吹き出した
Michael:なぁ、それ普通は男のセリフだろ
 ほんとに素直な奴だよな、お前って
Maria:す・素直って・・・だから勘違いしないでっ!
 もぅ〜気絶していてくれた方が良かったわ

Michael:目が覚めて僕だってドキっとしたさ
 いや、嬉しかったかな
 これで、またマックスより先に経験したことが増えた
面白そうに笑いながらマイケルは立ち上がり自分のジーンズを拾い上げた

Maria:心配して損した!ほんとにイヤな奴!
マイケルはジーンズに開いた穴を塞ごうとしてみたが何も変化しなかった
Michael:まだ、パワーは戻らないか・・
銃の穴が開いたままのジーンズをはき、拗ねたままシートに座りこむマリアの元に戻ると
身体を屈めkissした
Michael:僕は好きだけど
それだけ言うと背中を向けシートに散らばっているものを集め始めた

Maria:今、言ったこともう一回言って
Michael:ん?まだパワーは戻っていない
血の痕の残るタオルをヒラヒラさせた

Maria:その後よ!
Michael:なんか言ったっけ?
Maria:言ったでしょ!
Michael:なんて?
Maria:好きだって・・
Michael:そりゃ、ありがとう
マリアは立ち上がるとマイケルの側に飛んできて言った
Maria:違う!あんたが言ったの!好きだって
Michael:誰を?
呆れた顔でマイケルを見ると、彼の手からタオルをひったくるように取り上げた
Maria:なんで、こーんな憎らしいやつと、いっしょに来ちゃったんだろう・・

マリアは背を向け自分のバックパックに救急セットを詰め込んだ
握り締めたタオルを見つめていると昨夜の出来事が甦ってくる
あんたにとってあたしはラッキーチャームなのよ
立ちすくむマリア後ろからマイケルの腕がふわりと回っていた

Michael:約束したよな
 この休暇は僕の計画に従うって
 いくら僕でも、こんなところでドサクサまぎれに
 告白しようなんて、もったいないことはしない
Maria:どこへ行くか聞かない
 文句はいわない、バックパック1個の荷物
 その代わりきっといいことがあるから・・そう約束したものね
Michael:とんだ災難から始まっちゃったけれどな
 こいつは僕の計画じゃない
 でも災難付きは、予測済みだったな
視界に入ってくるエイリアン人形が、うなずいたように見えた

Michael:休暇の計画変更をするにしても、とにかく目的地までは行こう
Maria:うん、あっ・・マックスやリズに連絡していないわ
Michael:心配させることはなかったからいいさ
 それより、ちょっと心配だな・・ロズウェルの町で何も起きていないといいけど
 いきなり予告なしに襲われることなんてなかった

= to be continued =