ロズウェルの町を離れ、すでに4年が過ぎようとしていた
パワートライアングルによりグラニリスのパワーを受け継いだ7人はラングレィの警告に従がって
ロズウェル以外の場所で暮らしていた
通信機はマックスとマイケルが、運命の本はイザベル、ナセドの石とブロディが残した特殊装置は
エバが戻るまでカイルが預かることにして、お互いの無事を信じそれぞれの人生を歩き始めた
科学技術は飛躍的に進歩をとげ、存在すら知られていなかったマックス達の星もごく最近
発見されていた
しかし人類はまだ異星人の存在に対し猜疑心を持ち、得体の知れない者として脅威を持ちつづけていた
彼らの存在への感情は今だ敵としか扱われていなかった
そして、彼らの元に新たなシグナルが届いた
それは彼らに敵の存在を知らせるものなのか・・
あるいは星からのメッセージを伝えるものなのか・・・
彼らは自分たちのためではなく彼らの子供たちのために
再びロズウェルの町に戻ることを決意することになった
マイケルが運転する車はアリゾナ州に入った
ヘッドライトに照らし出された285号線はロズウェルへ真っ直ぐ伸びている
対向車のライトに映し出されるマリアの顔が心なしか蒼ざめて見え
両手を膝の上で堅く握り締めていた
マイケルはハンドルから片手を伸ばしてマリアの手を包んだ
Michael：何を考えている?
Maria：またロズウェルに戻ることになるなんて思っていなかった
Michael：あぁ、あの日まで僕たちはロズウェルから一生離れられないと思っていた
皮肉だよな、ロズウェルから出て行くことが僕たちの安全を今日まで保ってくれた
Maria：けっして忘れたわけじゃない あたしたちみんなの故郷だもの
だけど、何も知らない人の中で暮らせることが心地よかったわ
これが、あたしたちだけの問題なら戻ることに賛成なんてしなかった
いったい、これから何が起きるの？
あなたたちは、たまたま地球で生まれたけれど事情すら知らなかった
何か悪いことをしたわけじゃないわ
人間とは少しだけ違っていることのどこが罪だというの
マリアは後ろを振り向くとチャイルドシートで眠る我が子に目を向けた
ぐっすり眠るジョエルの手からおもちゃの宇宙船がシートに転がった
マリアに安心したような笑みが浮かんだ
Maria：不思議よね、子供たちは誰も自分の父親や母親の秘密は知らないのに
リズがあの子達の検査を始めたときから、みんなのお気に入りは
あの宇宙船のおもちゃだったわ
集まるたび、みんなで取り合いになるから、リズは同じものを、あと3つ買うことになったわ
それからは、どこに行くときもいつもいっしょ・・
もし、この子に何かあったら、あたし・・
Michael：マリア、そんな心配はやめるんだ
そんなこと僕がさせない 君もジョエルも僕が守る
Maria：わかっている それ以上にあなたを信じているわ
いっしょにいると誓ったあの日から、ずっとそうしてきてくれたもの
でも、どうしようもないの・・この気持ちだけはわかってもらえない
マイケルが静かに車を止めた
ハンドルを握り締め、しばらく黙ったままうつむいていた
マリアには彼の怒りは感じられなかった
そこにあるのは、どうしようもない哀しさだった
顔を上げるとフロントガラスの向こうに広がる暗闇をみつめたままつぶやいた
Michael：忘れたのか
僕は普通の人間とも仲間とも違うことをしたんだ
僕は・・人の命を奪ったことがある
たとえ、どんな悪人だとしてもその事実は消しようがない・・・
少しの沈黙のあとにマイケルは言葉を続けた
Michael：マリア、僕には過去の母の記憶はない
マックスやイザベルと違って、この地球で知ることもなかった
だけどお前を見て、初めてそれを知ることができた・・
Maria：マイケル・・・
そう 彼は本当に優しかった
夫としても父親としても・・だからロズウェルを離れても寂しくはなかった
目を細め今よりも小さかったジョエルとあたしを、まぶしそうに見ていることがあった
出逢った頃は、無茶なことばかりしていたのに・・
いまだってマイケルは急ブレーキを踏まなかった
マイケルはマリアを見つめると彼女の頬に指をすべらせながら言葉を続けた
Michael：子供たちの身体や組織は完全な人間のものだとリズが言っていただろう
過去の歴史では、変異種族の能力は単純に次世代には受け継がれなかった
ただ僕たちの存在が過去とは違っているから、僕たちのようなパワーが子供たちに
受け継がれるのか、それはどんな形で現れるか誰にもわからない
マリア、僕には信じてくれとしか言えない・・
お前たちを危険な目には絶対あわせない
なぜ、マイケルは、こんなに優しくいられるのだろう・・・
異星人の部分を除き、彼の地球での生い立ちを思い返してみれば
それは奇跡に思えた
もしも、あたしがマイケルと同じ人生を生きなければならなかったとしたら
こんな風に人に接することが出来ただろうか・・
『最初からそうだったわけじゃないだろ お前と出会えたから
そしてお前とジョエルがいるから』 マイケルはいつもそう言って笑った
強く優しい戦士が、彼の中にいた
マリアはマイケルの頬に手を伸ばした
Maria：マイケル、忘れたの?
あたしが、この世の中で一番愛している人はあなたよ
Michael：あの子よりもか?
Maria：ねぇ自分の息子とあたしを奪い合うつもり？
Michael：時と場合によっては、勝負するかもしれない
マイケルは悪戯っぽい目をして人差し指でマリアの唇をなぞった
Joel：僕はママのナイトだ・・
邪魔するように後部座席からジョエルの声がした
二人はその言葉に微笑んだ
Joel：ママ・・・もうフルサトについたの？
ジョエルが目を擦りながら聞いた
Maria：ううん、まだよ
大丈夫よ 着いたら、ちゃんと起こしてあげる
安心しておやすみなさい
Joel：うん・・
ジョエルは夢の中へ戻っていった
シートに転がっていたおもちゃの宇宙船が小さな手に吸い寄せられるように戻った
二人の微笑みが一瞬にして凍った
外の景色が懐かしい風景に変わっていく
ニューメキシコの小さな田舎町
ロズウェルは少しも変わっていない
子供の頃も４年前も・・たぶん１０年後も今とあまり変わらないだろう
懐かしさよりも暗く重苦しい想いがリズの胸を締め付けていた
Liz：マイケルには話したのね
Max：あぁ、最初あいつは子供たちを連れてくることに反対だった
Liz：私だって出来ることならこんな風にあの子たちを連れてきたくなかったわ
でも誰かに預けることも全員を一箇所に集めることも危険だわ
Max：僕たちといっしょにいるのが最善かつ唯一の方法
リズ、何度も繰り返し話しあって決めたことだよ
君が責任を感じることじゃない むしろマイケルは感謝していた
子供たちに変化が現れるとすれば間違いなくジョエルが一番最初だ
Liz：マリアには話したのかしら?
Max：真実がわかるまで、これだけは隠しとおすと言っていた
Liz：そう・・
会話が途絶えると遠くに稲光が見え雨が降り出した
気まぐれな天気は私たちが間違いなくロズウェルに戻ってきたことを教えてくれていた
＝リズの回想＝
マイケルとマリアは結婚して数ヵ月後に、この町を離れた
マイケルがまだニューメキシコ州立大のアパッチポイント天文台で仕事をしている間に
ジョエルが生まれた
予想より早くマリアのママをグランマにしてしまったのは、想像していたとおり胎児の成長速度が
普通の人間よりも速かったからだった
今、二人はローウェル天文台のあるカンザスに住んでいた
他のみんなより早くロズウェルを離れていたイザベルは今もボストンに住んでいた
ジェシーは2つ目の事務所を持っていた
そしてジョエルが生まれた１ヶ月後に彼女はフリーダのママになった
エバはあの日から半年後にロズウェルへ戻ってきた
彼女が戻ってくることをカイルが諦め始めた頃だった
カイルは二度と彼女が自分の側を離れることを許さなかった
エバはヴァレンティ家の一員になり、ジムはアリーの子守唄にカントリーを 唄うことになった
常識はずれのようなスピード展開をロズウエルの町の人間が妙に思わなかったのは
エバがテスだと思われていたからだった
私とマックスは大学卒業しても、故郷へ戻らなかった
私は卒業後も遺伝子研究を続け、マックスはインターンの最終行程に入っていた
子供たちに特に変化は見られず普通の人間の子供と同様に成長をしていた
しかし保育器のなかで幼児期を過ごしてから生まれたマックスたちと私たちの子供たちは違う
この先マックスたちのような能力を持つかどうは未知なことで、もしもパワーの要素を持っていたなら
それがいつどんな要因を引き金に発現するかわからなかった
あの子たちすべてに可能性がある以上、私は検査を続けなければいけなかった
そのために選択した道だったが、私にはザックのママだけでいることは許されなかった
＝To be continued＝
ＡｕｔｈｏｒＮｏｔｅ★
さてさて彼らを待ち受ける運命は今度はなんなのでしょう〜
実はまだボンヤリとして作者にもわかっていません
ＭＭを救え!の"Applause To You"の時が、そうだったのですが、次回作だけ必死に考えたほうが
意外にスラスラ思いつくのよね（←適当!?）
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、いちおう解説！子供たちの名前
キャストのミドルネームから名づけました MichaelとMariaの息子ジョエル：JoelはBrendan
IsabelとJasseの娘フリーダ：FredaはShiri、KyleとＡｖａの娘アリー：AlleはMajandraのAlejandra+Alexから
ジョエル・ゲリン、フリーダ・ラミレス、アリー・ヴァレンティ
ファミリーネームとのバランスが取れるように組み合わせてみました
あら？MaxとLizの息子はどこからと思われましたよね・・・ この名前だけはZanとMaxの合成なの
JasonのミドルネームはNathaniel（ナサニエルと読むのかしら？）
エバンスとのバランスが微妙に合わないので苦肉の策がこの名前になりました
彼らの子供が出てくるFanficでMichaelとMariaの子供は女の子が多いのね
でも私はどうしても男の子の気がする（←強引〜）
反面、私の想像の世界ではMaxとLizとの子供は女の子だったのですけれど、 お話の展開上、男の子になりました
ロズウェルを離れていた数年間、子供たちの誕生の話も書かなきゃいけないので
何が起きるかはず〜〜〜っと先まで考える時間があります ラッキー
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