01.CSI:NewMexico

Spin-Off Plot


AM8:00
ブラインドの隙間から朝の光が差し込んでいた
整然とファイリングされた壁面いっぱいの書棚と雑然としたインテリアが
混在する室内のソファで誰かが寝ている
光が顔を照らし始めると、ソファの主は、しぶしぶ動き出した

 あーぁ、また寝ちまったか・・
 昨日、シャワーを浴びたところまでは記憶があるけれど
 その先は、どうしたんだっけ・・まぁ、どうでもいいか・・
くしゃくしゃになったサンド・ブラウンの髪は襟足より長いくらい
無精ひげが少し伸びている
床にバスタオルが無造作に落ちていた
あくびと伸びを繰り返し、まだ目を閉じたままベッドがわりのソファから
抜け出した

Maria:新人のマリア・デルカです、おはよ・・うっ・・あ・・
力強くノックし意欲満々でドアを開けたマリアの目に飛び込んできたのは
ラボとは全く、そぐわない格好で立っている人だった
たぶん、その姿では、どこにいたとしても犯罪になるだろう
マリアは条件反射で習慣となっているプロファイリングを始めてしまった
年齢は25歳から30歳、背の高さは6フィートくらいかな
広い背中から続く・・おしり
 『嘘みたい、この人、なんで裸なの!!!』
目が見開かれ、思わずゴクリと喉がなった
肩越しに振り返ったその人は、まだ眠いのか、視力が良くないのか目を
細めたままだ
長い指で掻き揚げる乱れた髪がサラサラ指の間を流れている
 『ロダン・・? こんな彫刻見た気がする・・』
中途半端で止まったままの挨拶でマリアの口は開いたまま
その姿に見とれていた
Michael:お前、誰だ
 『うっ、彫刻がしゃべった!』
乱暴な言い方だがソフトに響く声は、耳に心地よかった
 『セクシーな声だわ』
マリアは返事をしないまま、ぼんやりと、その人の動きを眺めていた
言い訳しないで正直にいうと心の底で期待していなかったわけではない
その人が、こちらに向かいゆっくり身体を向け始めたとき自分の心の
底の密かな期待に焦りだした
Maria:あっ! あの、あの・・・また後できます

その人が正面を向くより早くマリアはドアから飛び出した

Maria:あれは、いったいなに? あの人は、なんなのよ!!
あわてて外にでたマリアはガクガク震える脚で、ドアを背に寄りかかった
呼吸を整えながら振り向くと、ドアのネームプレートを確かめた
間違いなく自分が今日から働くことになった職場
CSI:NewMexico/Technical laboratory

 『落ち着くのよ・・いつものようにすれば問題ないわ』
マリアは深呼吸し脳細胞に新鮮な空気を送った
 『なぜ、あんな格好なのかは別にして
  ここの警備の厳重さを考えると外部からの進入者じゃないことは
  確かね だと、すると・・彼は検査官? 捜査員?
  お掃除に来て寝込んでしまった清掃業者? 
  いやだ、裸でお掃除だなんて・・』
マリアの想像が妄想に変わり、ふやけた表情になり始めだすと
別の声が聞こえてきた

Max:入り口で検問? マイケルのボディーガードに立候補するの?
上から聞こえてくるのは、室内の人より少し低音で2倍ソフトな響きの声
下を向いて一心不乱に現状分析していたマリアは、視界に侵入してくる
磨き上げられた靴から視線をゆっくり上にあげていった

 『なんてことなの! 私はモデルクラブにでも迷い込んだのかしら?』
ごくゆるいウエーブのダークブラウンの髪
反射の加減で半透明に見えそうな、はしばみ色の瞳は
まるで琥珀かトパーズのようだ
魅力的な笑顔とセットになった綺麗な歯
サマースーツは黒に近いグレイ
50cmの至近距離から、いい香りがする
 『なんだかクラクラしてきたわ
  やっぱり、私には大学の研究所の方が似合うのよ
  帰ろう・・目の保養と施設の見学にきたと思えばいいんだもの
  あっ、ロダンの人の名前、マイケルっていうのね』
ため息をつくマリアは叱られた犬になった気分がした

Max:ごめん、ごめん
 からかうつもりはなかったんだけれど、君の表情が、あんまり
 面白かったから

 『ここにきて数分間の間にミネラルウォーター3本分くらい
  緊張と興奮で汗が吹き出た気分でいるのに、それを面白いの一言で
  片付けられてたまるもんですか!
  いいわよ、今日1日は、なんとしてでもここにいてやるわ』

マリアの気持ちなど、おかまいなしにドアを開くと中に向かって
声をかけた
Max:マイケル、今週は何日目だ?
   ラボはお前の別荘じゃないぞ
Michael:そのセリフは、この分析結果を見てからにしろ
緊迫した空気が流れる
Max:ブラボー! あの膨大な分析が終わったのか!?
Michael:お前、誰にむかって言ってる気だ
 『超ハンサムが二人、撮影スタジオに見学に来たみたいで
  ドキドキだわ』
声を聞いているだけで満足できなくなったマリアは
室内をそっと覗き込んだ
 『あの人が選ぶとすればラフな感じのスタイルよね
  ごくシンプルなコットンの白いシャツとジーンズかな』
幸せな想像をしている時間は短かった

まさか、嘘でしょ!!

Maria:あの〜、あの人どなたですか?
マリアはマックスの上着の裾を引っ張って聞いた
Max:どなたって・・
 あれ? もう逢っていたんじゃないの
室内にいたのは、くしゃくしゃの髪はそのままだが
分厚い眼鏡で、すてきな瞳の存在が消され、着ているもののセンスは
最悪、とりあえずあるものを着たとしか思えない
ご丁寧に書かれたTシャツのロゴは
   "Call me Genius!"*天才と呼びな!

洗濯のせいなのか、元々の色だったのか
その迷彩ぐあいは、どんな天才にだって言葉にできない
どうやったら、ここまで変身できるのだろうか
今日の朝、ここに来たときのスタートからやり直しに戻されたように
マリアの口は開いたままだった

      =to be continue or not?=


AuthorNote★(2006.7.25)
ここに出てくるMariaは、どっちかと言えばCITCのセレステに近い感じね
ダサダサ眼鏡のMichael(Brendan)は、これからどう変身するのか
ふふふ、しなかったりするのかも?!