
Michael:それで何をする
Trevor:決めたんだな
Michael:あんたはマリアの想像力の凄さを
知らないだろう?
あいつは僕と連絡を取るための方法が
これしかないとすぐに気がつく
その上怖いものしらずさ 誰が止めたってマリアはやってくるよ
Trevor:今までの出来事を考えると当然か

もう少し時間をくれ お前も彼女にも休息が必要だ
待っている間に、この星を見ていかないか? 次はいつ来られるかわからないだろう
Michael:そうだな
せっかくの故郷なのに何も見ないままじゃもったいないか
マックスに自慢が出来ない
眠るマリアの横で彼女が目覚めるのを待っていた
Alex:眠り姫を起こしたのは王子さまのkissだっけ・・
Kyle:どっちかというとシュレックを助けにいく逞しいお姫様じゃないか?
痛っ・・なんだよ
隣のテスがカイルの足を蹴った

Max:マリアが心配だよ
わかっている、この状況でマイケルに声が届くのはマリアだけだ
でも救う方法がわからないのにマリア一人で行かせていいのかな
マリアを守るとあいつに約束したんだ
マイケルは彼女が命の危険を冒すことを望むだろうか

Liz:あなたなら、どうするの? 見ないように木の陰に隠れるつもり?
無謀な挑戦なんかじゃないと思うわ
私にも言わないけれどマリアには何か確信できるものがあるようなの
私がマリアでも同じことをするわ たとえ誰に止められたとしても
そんなマリアをマイケルは知っているわ
Tess:私たちの潜在意識の中に何か残されているかもしれないわ
マックスとリズがテスを見た
Tess:私たちが断片的に思い出す過去の記憶の中に必ず何かあるはずよ
マックスの中からそれを引き出すことが出来るのは私だわ
みんなの目がテスに集中した
Tess:別に私に恋してと言っているわけじゃないの
マイケルは自分で壁を壊し新しい道を歩き出しているわ
イザベルは今回のことで自分の過去を捨てられた
でも私は何も変わっていない・・

いつか、また過去の記憶に操られるようになるかもしれない
他の3人と違って私は異星人に異星人として育てられた・・
身体の中に人間の要素があっても人間らしさを
教えてくれた人はいなかった ここにいる仲間以外にはね
でも、これから先はわからない・・
ここにいるみんなを裏切ることになっても
なんの痛みすら感じられないかもしれないわ
テスの言葉は心の奥にある叫びのように聞こえた
カイルは彼女の肩を抱き、続けるように促した
Tess:マックス、認めたくなくても私たちの前世の歴史は消せないの

Liz:テスの言うとおりよ
過去のあなたたちが結婚していたことは、いくら否定しても事実なのよ..
その時二人は愛し合ってお互いを信じて生きていた
マックスが異議を伝えようとするのを静止リズが続けた
Liz:あなたたちの星の人は同じ人生を繰り返させようとしたわ
でも、地球を選び人間の遺伝子を使ったことで変化したのよ
Max:『人間らしさ』が僕達の中にある以上、同じ歴史は繰り返せない
マックスの言葉にリズが頷いた
Tess:普通に恋をし、こんなロッジで恋人と休暇を過ごす・・
私も自由になりたいの

Isabel:マイケル達を助けようとしたときパワーを失うことも
覚悟し過去との決別を決めたでしょ
それはまだ終わっていないわ
兄さん、二人を呼び戻すだけじゃなく
本当の『マックス』の人生を生きたいでしょ
Kyle:みんなにとってはどんな存在か知らないけど
俺にとっては、ずっといてほしい家族だと思っている
過去の記憶からテスを解放してやってくれ

Max:テス、僕は過去に君と過ごしたことは一度も思い出していない
どこかで否定したい気持ちがあったからだと思う
でも僕たちみんなの未来のために事実を受け入れる時が来たんだね
Tess:みんなマイケルとマリアの無事を願っているだけよ
さぁ探してみましょう
テスがマックスの手を取った

Michael:思い出したよ
Trevor:何を?
Michael:小さい頃ここで溺れそうになっただろう
Trevor:あぁ・・沈んだまま浮かんでこないから驚いた
Michael:あの時も助けてくれた
Trevor:お前は水を吐き出しながら、もっと早く助けろと文句をいっていた
Michael:今も同じだな・・あんたには文句しか言ってない
手遅れにならない前に言っとく、ありがとう
Trevor:また逢えるさ 僕達の力を忘れたのか
Michael:そうだな、全自動の生活も悪くないけれど
僕は考え方がクラシックな奴らしいからさ
Trevor:それもマリアに言われたのか?
そろそろ時間だな
Michael:マリアはまた一人で大丈夫なのか?
Trevor:僕の推測が正しければマックスが守ってくれているはずだ
Michael:マックスが?
****
Tess:マックス何か見えた?
Max:赤い湖みたいな場所
Tess:過去の私たちが出会った場所だわ
Max:マイケルがいる! そうか、保育器の繭だ!
マリアを保護すればいいんだ!
Maria:なんなの、あたしを保護するって・・・?
マリアが目を覚ました
****
Trevor:マリアはここを目指してくる
二人がリンクしたら一人で戻るように伝えろ
たぶん来たときよりも体力を必要とするだろう
一人じゃない、お前をいっしょに連れて帰るんだからな
Michael:僕を?マリア一人で?
Trevor:忘れたか、リンクは感情を同化させる
お前はマリアの中にいっしょに存在することになる
残された身体、つまりお前には感覚しか残されない
無防備で暗闇の中を手探りで進むようなものだ
それでも彼女を信じろ、お前が帰るべきところはマリアが導いてくれるはずだ
Michael:そして自分を信じるだけか・・
Trevor:僕はもう行くよ
湿っぽくなるのはお互い似合わない
Michael:あんたが兄貴でよかったよ
Trevor:お世辞でも嬉しい
じゃあな
トレバーは背を向けると去っていった
退化したはずの涙がにじんでいた
****
Max:いいかい、マリア
みんなの力が君を保護するバリアを作って赤い湖まで送り届ける
マイケルはそこに必ずいるはずだ
Maria:わかったわ
走り回らなくてもいいんだから楽勝よ
みんな心配しないで、2度あることは3度あるよ
Alex:それ、いい例えに思えないけど・・
緊張している空気が少し和んだ
Maria:行ってくるわ
マリアが胸に手を当てながら言った
青ざめていた顔に赤みがさしていた
Liz:マリアお願い、無理だと感じたら戻るのよ
今できなくてもマイケルは必ず連れ戻すわ
Kyle:俺たち化学は赤点だ!無駄な抵抗はするな
Tess:へんな激励・・でもこんな仲間が待っているのを忘れないでね
Isabel:マイケルなら多少手荒に扱っても大丈夫よ
彼もあなたが危険になるのを望んでいないわ
Max:僕達みんなで君の帰り道を作っている
必ず戻っておいで・・
Maria:ありがとう・・
さてマイケルの首に縄をつけても連れて帰ってくるわ
全員が手をつないだ
マリアは再び装置に触れた
身体が暖かい光に包まれていた

準備はいい?
えぇいつでもいいわ
マリアは自分の身体が光になっていくように感じていた
Michael:やっぱり来たな
Maria:悪かったわね
どうせ、あたしはしつこいわよ
ふっと肩の力が抜け笑みがこぼれる
マリアが側にいると、どんな困難な状況にいても
簡単に解決できそうに思えた
Michael:休暇が始まって、たった3日なんだよな
もう半月くらいいっしょにいるような気がする
Maria:うん、信じられないくらい長い距離をずっと旅しているのに
家から一歩も出ないで二人っきりで閉じこもっているような・・
へんな気分だよね
Michael:いっしょにいるといつも楽しかったけれど
こいつは一生忘れられない思い出になりそうだ
Maria:これが最後みたいな言い方やめてよ
Michael:そうだよな まだいっしょに行きたいところはあるし
休暇の半分以上はこのドタバタで台無しだ
優しすぎる言い方が気に掛かる
Maria:何か隠しているなら全部白状してよね
Michael:いっしょには行けない
Maria:どういうこと?戻れないの・・
Michael:違うよ、僕の身体はまだ遠い場所にある
君は先に戻るんだ
Maria:イヤよ! いっしょに帰ろう
マリアはマイケルに抱きついた
彼女の背中をさすりながらマイケルは言った
Michael:リンクした僕の心はいっしょだよ
身体があとから追いかけているだけなんだ
きっと重たいぞ・・君が無事にみんなのところへ戻れなければ
僕も帰れない
息が詰まるような思いの中マリアは顔を上げ言った
Maria:大丈夫よ、意識のないあんたを引きずって移動したわ
あれはこの練習のためだったんじゃないのかな?

Michael:僕は必ず帰る
Maria:大事に連れて帰ってあげる
あなたのハート・・
マリアが戻ってきた
マイケルはまだ姿を現さない
二人の条件が条件が違っていた
マイケルは遥かな距離と時間を超えマリアを目指しているはずだった
あるいは、もうすでにロズウェル以外の場所に戻っているのかもしれない
しかしもうマイケルの感覚に触れることは不可能だった
1時間・・・
2時間・・・
3時間が過ぎてもマイケルは戻らなかった
沈黙の中、時計の音だけが響きつづける
待つこと以外に何もできない・・・
外に朝の光が差して来ていた
マリアが立ち上がった
Liz:マリアどこへ行くの?
Maria:散歩してくるわ
あ〜あ、あいつ絶対に寄り道してるわよ
Liz:いっしょに行くわ
Maria:大丈夫、一人で行きたいの
休暇の始まりの場所へ、事件のかな?
マリアに顔には悲壮感はなかった
心配するリズをアレックスが止めた
Alex:マリア行っておいで
案外そこにマイケルが戻るかもしれないよ
Maria:そうだよね
笑顔を残しマリアは出て行った
朝の光はあの日と同じだった
この場所で必死でマイケルを引きずって傷の手当てをして・・いっしょに眠った
すれ違いばかりの想いがやっといっしょになったのに
本当に離れ離れになっちゃうなんて・・ううんマイケルは必ず帰ってくると言ったわ
でも、いつとはいわなかったわ・・ 酷いよこんなの
置き去りにして、しぼみ掛けたエイリアン人形に小石を投げつけ地面に座り込んだ
優しい風が吹きぬけた マリアは身体がふわりと軽くなったような気がした
『これでも急いで来たんだ』
もう〜重症だわ、鳥の声までマイケルの声に聴こえる
『待たせすぎたか? 僕の遅刻はいつものことだろ』
懐かしい声、あたし、まだ幻の中から抜け出せないのかな〜
『うーん、やっぱり地球の空気が一番だなぁ』
間違いなくマイケルの声、戻ってきたんだ!
嬉しすぎて声が出ない・・
それなのに確認するのが怖くて後ろを振り向くことも出来ない
夢でも幻でもないマイケルの腕がマリアを包んだ
『逢いたかったよ・・マリア』
耳元で彼の声がする 様々な想いが溢れてくる
マリアは、ゆっくり振り向いた そこにマイケルがいた
Maria:マイケル・・髪のびてるよ
それだけ言うのが精一杯で、後は言葉にならなかった
マリアは彼の胸に顔を埋め泣きじゃくっていた
我慢しつづけた涙が止まらない
それは悲しい涙ではなく幸福の涙に変わっていた

Michael:もう泣かないで
僕は帰ってきたよ
お前を愛してると言うために・・
Maria:・・そんなこと言うから、余計に止まらないじゃないの
Michael:それじゃこうしようか
マイケルのkissは優しかった
Maria:あたしも愛してる・・・
なかなか戻らないマリアを心配してみんながやってくると

そこには待ち望んでいた光景が広がっていた
マリアはマイケルの膝で子猫のように丸まっていた
微笑みながら見下ろすマイケルは髪のせいだけでなく
大人びて見えた
人差し指で「静かに」のジェスチャーをするとマリアの髪を撫でた
Liz:まるで「幸福」という名前の絵を見ているみたいだわ
Alex:つい何日か前まで顔を合わせると喧嘩していた二人と
同じには見えない

Kyle:なんだか俺・・
感動して泣けてきた
Tess:あなたは頭の中も筋肉かと
思っていたのに・・
鼻をすすりながらテスが言った
Kyle:君こそ鉄のハートだと思っていた
Isabel:私たちは邪魔なようよ
忘れていたけれど二人は楽しい休暇を楽しむためにここへ来たのよね
Alex:ずいぶん遠回りしてきたけれど、やっと希望どおりになったようだよ
イザベルの肩に回したアレックスの手は力強かった
4日目の休暇の朝は、すべてを忘れさせる光に満ちていた