#11 Benefit of boldness

High Speed Turn

Liz:ねぇマリア、そろそろ何が起こっていたのか教えてくれてもいいでしょ
Alex:僕も聞きたいよ、マリアの大冒険の話
Maria:あら? 誰も聞かなかったじゃないの
Isabel:誰も聞けなかったのよ・・
 マイケルが戻ってくるまで怖かったわ
 誰も口にしなかったけれど最悪のシナリオも想像しないわけにいかなかったでしょ・・・
 あなたが無事に戻ってこられただけで十分なのかもしれない
 でもそのことで一番傷つくのがあなたなのがわかっていたもの
Maria:ありがと・・
 本当のところね、きっと何を聞かれても答えられなかったわ
思い出すとまた涙があふれそうになった
肩を抱くマイケルの手が現実の幸せに引き戻してくれた

Kyle:俺はマイケルの話も聞いてみたい
 なんて言ったって、スターウォーズを体験してきたんだぞ
 なっ!やっぱり、そこいらじゅうエイリアンだらけだったんだよな
カイルが身を乗り出すようにして聞いた

Tess:馬鹿なこと聞かないで
 私たちのように人間の遺伝子を組み込まれたハイブリッドじゃないのよ
Michael:外見は気にならなった
 視覚よりも感覚で相手を認識する感じだったからな
 むしろ彼らの方が警戒していたみたいだった
Kyle:そりゃ、そうだよ
 地球にいるときだって、相当うさんくさい奴だったからな
Maria:授業にも出ない問題児だものね
Alex:そうそう、何回も警察に捕まるし試験中に呼び出された
Michael:おいマックス、僕がいないあいだずっとこんな調子だったのかぁ?
ロッジに笑いが広がった

Max:そんなに慌てないで順番に聞こうよ
 まずはマリアからだね
Maria:はい、はい あたしの冒険の話ね
マリアは話はじめるとき、また胸に手を当てた

何だろう・・マリアにあんな癖なかったわ
リズは何度も目にするマリアの仕草が気になっていた


Maria:あたしがあれを使うのは3度目だったけど
 前の2回とは全然違うことはわかっていたわ
 だって地球じゃないところへ行かなきゃならないんだもん
Liz:確信があったんじゃなかったのね・・そして隠していた
Maria:ごめんね、でも出来ると信じていたわ
 とにかく、やらなきゃいけないって思ったの
私が感じたマリアの自信はなんだったのかしら・・リズは心の中で呟いた

Maria:みんなの力って凄いよ
 あたし一人のときは見えなかったものがたくさん見えたわ
 どんどん小さくなっていく蒼い星を見て宇宙飛行士になった気分よ
 と言ったって実際に行っていないんだけどね
 宇宙から地球をみたらこんな感じなんだなぁって感動していたわ
 心配することなんて全然なかったと思っていたわ・・あの時までは

***
うわぁ!何もしないのにどんどん先に進んでいくわ
このままマイケルのところまで連れていってくれるのかしら?
マリアがそう考えたとたんに軽い衝撃と共に動きが止まった
目前に何も障害はないのに先に進むことができなかった
Maria:何?行き止まり?
Max:マリアどうした
Maria:先に進めないの
 でもまだ到着したように思えないけど
Tess:マリア、何か見えない?
Maria:何も...壁なんてないのに
 普通に空間に浮いている感じかな..
 あ、その方が変なのかも
 うぅ...なんか気持ち悪くなってきた 目が回りそうよー
Max:落ち着くんだマリア
Maria:待って!マックスが言っていた赤い湖が見える!
Liz:たぶん地球とアンタールの次元の壁だわ! そこがきっと入り口よ
 でも、どうすれば入れるのかしら...
マックスの頭にはいろんな思いが巡り必死に答えを探していた
僕はまだ自分の人間以外の部分を受け入れていない
自分たち異星人に関わることで過去の人間が誰も直面しなかった
答えの出せない問題にリズやみんなを引き込むことに躊躇している
吹っ切らなければいけない、これは僕が答えを出すことなのだから

Maria:そうだわ!マックス、パワーを送るのを止めてバリアを外して
 私を守ってくれているみんなのバリアを消せば...
Max:それは危険すぎる
マックスはマリアの提案の言葉を止めた
Maria:周りには敵はいないわ
 みんな忘れているかもしれないけれど、あたしの身体はそっちにあるでしょ
 敵が隠れられそうな場所もないし落っこちる心配もないわ
 ここまできて立ち往生なんてイヤよ!
Tess:マリア無茶いわないで、一旦パワーを中断すれば、もう一度あなたを
 保護することは出来ないわ
Isabel:それじゃ、このままマイケルのことを諦めるの...
Liz:マリアだって同じよ
何度目かの重い沈黙がみんなを包み込んだ
決断を口にしたのはマックスだった
Max:二人の命を天秤にかけることは出来ない
 でも僕はマリアの直感に頼りたい
 次元を超えたとき、必ずマイケルがマリアを導き守る
二人がリンクしていたときを考えるとマックスの判断に異議を唱えるものはいなかった

Alex:マックス達みたいなパワーはないけれど人間にも
 第六感 "シックスセンス"があったよね...
地上に残されたマリアの体は抜け殻のように何も反応しない
見開かれた瞳が他のみんなの決断を促していた

マリアを包んでいた柔らかな光の輪が消えた
マリアは透明の壁に向い恐々手を伸ばしてみた
水面に手を入れたように空間に波紋が広がり腕はすんなりと先に進んだ
Maria:やっぱりよ!通れるわ!
Liz:マリア待って!地球とアンタールの次元が融合を始めたとき
 人間は実体化していられなくなったでしょ
 声すら聞こえないような次元の狭間に引き込まれたわ
 今のあなたは魂だけの状態に近いのよ
 運良く通り抜けられても透明のままではマイケルがあなたを見つけられない
Maria:じゃ次はどうすればいいの
Liz:マイケルがわかる何か目印になるものがあればいいけれど
Tess:それなら、マックスあなたが出来るはずよ

テスがマックスの手に触れるとマックスの脳裏に
浮かんだアンタールの紋章が手のひらで輝き出した
Max:マリア、じっとしていてくれ

マックスは手のひらに浮かぶ5つ星をマリアに送った
針で刺したくらいの痛みを残しマリアの心臓近くにアンタールの紋章が輝いていた
Maria:ふぅん、これで入国審査はパスするわけね
 じゃあんた達の星へ行ってくるわよ
Max:まだ安心しちゃだめだよ
Maria:了解! これでお守りが二つになったもの
お守り・・・?
それが何を意味しているのか聞く前にマリアは次元の壁の中に消えていた

やたらに足が重いわ...これも別の星に来ているせいなのかな
さっきまで光と一体化していた体が液体に変化しているみたい
水の中で目的地もわからず、もがきつづけているようだった
あと少しなのに..マイケル、あんたいったいどこにいるの?
マリアは姿が見えないマイケルの存在をどんどん近くに感じていた

***
Tess:さぁこれで私の役目は終わりよ
 あとはリズ、あなたとマックスで答えを出して
Liz:私とマックスで...どういうこと?
Tess:ここまでは過去の記憶に頼ることが出来たわ
 マリアは私たちのパワーコントロールから一度離れたわ
 どんな風に姿を現すかはわからないの
 もう一度私たちのコントロールに戻すためには、あなたの力が必要だと思うわ
Max:僕達4人の存在は人間と異星人の遺伝子配合だけじゃなく
 過去と現在の両方に関わっている
 たとえ僕達にとって過去のことだと思っていたことも
 彼らにとっては続いている現在なんだ
 その彼らは過去にも現在も僕達のように人間と
 交流することはなかった
 リズ、君はさっき言ったよね
 僕らがこの地球で生まれたことで過去と変化したと
 マリアにとっての力は僕よりも君の力が大きいはずだ
Liz:でも、私にはテスのようなパワーはないし...
 どうすればいいのかわからないわ
Tess:マックスに救われたあなただから変化しているはずよ
 何か感じない?
Liz:何も..きっと何も変わっていないわ
 私には無理よ
リズは弱気な気持ちをため息といっしょに吐き出した
Alex:リズ、自分のことになったら急に弱気になったね
 さっきまでの勇気はどこへ行ったんだい?
 マリアはきっとマイケルを連れ戻すよ
 マックスがアンタールへの道を教えたのなら
 地球への道を教えるのは君だよ
 もちろん僕たちみんながいっしょだ

***
マリアの気配がした
Michael:やっぱり来たな
振り返ったマイケルの視界にマリアは見えなかった
どうしたマリア...どこにいる?

見つけた!
次元の揺らめきの中に蒼く光る紋章が見えた
その方向に向って手をかざすとマリアが姿を現した
Maria:悪かったわね
 どうせあたしはしつこいわよ
二人の魂は再びリンクした
これからが問題だぞ
僕達二人の未来のためだけじゃなく、伝えなければならないことがある
マックスお前に...
Michael:今感じている僕の感覚を感じなくなっても気にするな
 僕達の帰る故郷の星だけを目指すんだ
Maria:私たちの星・・・
 この星じゃなく地球をそう呼んでくれるのね
Michael:ここに来たから言えるんだ
 僕の故郷は僕自身が生まれ君のいる場所だ

マイケルが次元の壁に向って手をかざすと広がった空間に地球が見えた
Michael:さぁ行くんだ・・・
マリアを抱きしめていたマイケルの感覚が薄れ消えていった
だが胸に手を当てるとマリアには確かにマイケルの存在を感じられた

信じられないくらい体が重い
まるで自分の足じゃないみたいだわ
回りの風景がすべてスローモーションに見える
こっちでいいのよね...
大丈夫よ みんなが待っている、頑張るのよマリア・デルカ!
マリアは見えている蒼い星の方向を目指していた
それは残されていたマイケルのパワーが消えていくと共に薄れはじめていた

***
マリアが姿を消してから30分が過ぎていた
いつまで待てばいいのか...このまま待ちつづけていいのか
仲間たちの中に不安が広がり始めていた
Isabel:ねぇリズ
 NYの兄さんとコンタクトしたときのことを試してみたら?
 次元の壁は透明でしょ
 マリアは絶対あなたに気づくはずよ
 彼女を次元の外に連れ出せたら...ここまで戻れるはずよ

そこにいる誰もが少しずつ強くなっていた
一人一人が自分の役割を果たすように
あの時、NYのマックスに危険を知らせようと必死だったわ
同じくらいマリアは掛替えのない親友..今も未来も変わらない
イザベルとリズは片手を握り、お互いのもう一方の手で装置を触った
リズは目を閉じ意識をマリアにだけ向けていた

***
リズはマリアが言っていた宇宙の中にいた
蜃気楼の先に蒼く輝く5つの星の紋章と
よろめきながら進んでくるマリアの姿が見えた
Liz:マリア!! こっちよ!
マリアがリズを見た
リズが手を伸ばすと透明な壁が先を阻んだ
やはり別の次元に入れるのはマリアだけだった
リズはマリアを励ましつづけた
Liz:あと少し! みんな待っているわ、頑張って!
Maria:体が重いわ
 戻ってきたらダイエットさせようかしら?
リズはマリアと重なるように一瞬マイケルの姿を見たような気がした
えっ?マイケル..いっしょなの?
マリアの手がリズに届いた
Liz:マリア!
Maria:リズ、もうクタクタよ...立ってられないくらい
Liz:大丈夫、ここからは私たちが連れて帰るから
 マックス、イザベルの手を握って!
 マリアの場所を確認しておいてちょうだい
Max:確認できたよ
 リズ、君は戻れ
Maria:行っちゃうの
マリアが心細そうに呟いた
Liz:私たちの星はすぐそこよ
 あなたを連れ帰る快適なリムジンを用意しにいくのよ
 でもマイケルはどこ?
Maria:あたしが無事たどりついたら後から帰ってくるの
Liz:それじゃ、よけいに急がなくちゃ...

***
リズが目を開けた
Liz:マックス
Max:リズ、言わなくても伝わったよ
 マリアとマイケルを呼んでこよう
二人は手をつなぐと装置に手を置いた

光が二人を包み込んでいった
今日までの様々な出来事...
衝撃的な真実を知った驚き
お互いの心が同じように運命の人を知った日
初めてのkiss...
心ならずも告げなければならなかった別れの言葉
辛く苦しい日々も涙もすべてこの日のためのもの
二人を包んだ光の繭は更に輝きを増した
重ね合わせた手から次元の扉の外で待つマリアに向って放たれた光は彼女を包み込んだ
Maria:暖かーい・・・気持ちよくで眠ってしまいそう
Liz:眠ってもいいけれど、すぐつくわよ
光は一直線に戻るべき道を進んだ

***
Alex:リズ、マリア
 君たちが、うらやましくなってきたなぁ
Maria:あなたたちだってこれからでしょ?
ロッジの仲間達はいつのまにか4組のカップルになって座っていた
Tess:私にはもう少し選択権があると思えるけれど
Kyle:それをいうなら俺だって!
 言っとくけど学校の中じゃ人気者なんだぞ
カイルとテスはつないでいた手をあわてて離した
Alex:あーあ、ちょっと前のマリアとマイケルみたいにしか見えないよ
Maria:いっしょにしないで
Michael:いっしょにするな
抗議のハーモニーが笑いを誘った

ロッジの外からクラクションが聞こえてきた
Kyle:親父のお迎えだ
 さぁ帰ろうぜ俺たちの町へ
Isabel:全員一度には無理だわね
Liz:私たちはもう少しマリアたちといっしょにいるわ
Alex:じゃ、後で迎えにくるよ
Maria:お願いがあるんだけれど
 来るときにマイケルのバイクを持って来れないかしら?
マイケルを含めみんなが怪訝そうにマリアを見た
Maria:もともとあたし達の休暇はマイケルのバイクで来るのが計画だったのよ
 すごい休暇になっちゃったけれど少しはプランどおりにしたいわ
Michael:マリア...
Maria:約束でしょ、文句はいわない
マイケルはマリアの額にkissをした
Isabel:どうやらお邪魔なようだから帰りましょ
残る4人は帰る4人を見送りロッジに戻った
 まだ聞きたいことが残っている
 伝えたいことは、まだ話していない

4人の想いはまだ心の奥にあった

=to be continue=