#5 Intermediate point

High Speed Turn

Michael:なんなんだ、あれは・・・ Max:前にNYに行った時に同じものを見た

Michael:現実なのか・・それとも、ただの作り物の映像なのか?
Max:どういう仕組みなのかは僕にはわからない
Michael:あの中心の星が僕たちの星か・・・
 すぐ近くにあるみたいだな・・まるで飛行機からでも見ている気分だ
何かに導かれるようにマックスが手をかざすと目前に広がるフッドの星座が
順に点滅をした
その光景にマイケルは魅せられていた

Michael:どこにあるのかな、僕たちは、いつかあの星へ戻るのか
Max:お前が誰より望んでいたことだ
Michael:自分が人間ではないと知った日から、それしか考えなかった
 どんなところでも、ここの暮らしよりはいいと思っていた
Max:今は違う・・か


『マイケル・・・助けて・・・』
夢の世界を打ち破る衝撃がマイケルに走った

Michael:マリア!
Max:どうした
Michael:上で何か起きたんだ!マリアが僕を呼んでいる
 早く戻らなきゃ・・・
言葉よりもすばやく身を翻したマイケルは梯子に向っていた

いったい何が起きているんだ、マリア・・
地上が近づくに連れ今まで触れたことのないマリアの恐怖感を感じられる
どんなに信じられないようなことが起きても、いつだって平気な顔で乗り切ってきたあいつが
何も出来ずにただ僕の助けだけを求めているなんて・・
背筋に冷たい汗が流れる
待ってろ、あと少しだ

マリアは洞窟の入り口の側で呆然としたまま座り込んでいた
Michael:どうした、誰か来たのか? おい、マリア答えろ!
様子がおかしい
身体が膠着したように動かず見開かれたマリアの瞳はガラス玉のように見えた
マイケルの呼びかけにも反応も示さない
Michael:何かされたのか・・
マイケルはマリアの身体を揺り動かした途端、彼女の手から何かが転がり落ちた
それは彼らの星のシンボルを鈍い光で放つ、あの通信機と同じ形をしていた

Michael:こいつのせいか!
 しっかりしろ!マリア、僕の声が聞こえるか!?
マイケルは空ろな表情のマリアを抱きしめた
マリアの身体が異様に熱く、脈の間隔が今にも止まりそうに遅くなっている
Maria:・・・・・・・・
Michael:なに?
Maria:...マイ...ケ...ル
Michael:ここにいる
Maria:ロズウェル..の...町..へ戻って
Michael:何?なにを言っているんだ
Maria:あんたを...待ってる人..戻って....早く
マイケルはマリアの肩を掴み彼女の顔を見た
空ろな表情は変わらず、彼女の声がどこから聞こえてきているのかわからない

Michael:誰が僕を待っているって、誰がだ?
 マリア・・お前どこにいる
マイケルは突然自分が高熱を出したときのことを思い出していた
あのときは1人で砂漠を彷徨い続けていた
星の文字・・自分がどこにいるのかわからなかった
姿が見えないのに、みんなの声が聞こえた
暗い穴の底に横たわり見上げた先にマックスがさし出した手が見えた
後ろで見つめていたマックスに向ってマイケルは言った
Michael:僕のときと同じだ・・なぜだ、マリアは人間なのに
 マックス、マリアを助けてやってくれ!
 このままじゃ命が危ない・・
Max:マイケル、すまない
 この装置が僕達の星のものでマリアが何らかの影響を受けているとすれば
 パワーを使うことはマリアをますます危うくするだけた
Michael:どうして!
Max:パワーを使ってブロディを通じてラレックと交信したとき・・彼の心臓は停止した
 誰かがマリアの身体を通じで交信しているのかもしれない・・
Michael:もういい!お前の力は借りない!
Max:マイケル待てよ!
Michael:マックス、これがリズだったらお前何もせずにいられるのか
マックスに返す言葉は見つからなかった

マックスの視線を振り切るとマイケルはマリアを胸に引き寄せると眼を閉じ
彼女の胸に手を置いた
精神を集中しマリアだけに語りかけた
Michael:マリア聞こえているか?
昨夜、自分の傷を癒したときよりも、もっと注意深く意識を集中させマリアの内面に触れた
Maria:うん、だけど周りがだんだん、ぼやけて来ているわ
 上も下もない..宙に浮いているみたいなんだもん
 ここどこなの? あたし怖い...
再びマリアの恐怖心が伝わってきた マリアの姿はまだ見えない
Michael:マリア、落ち着いて 僕は側にいるよ
 僕が君に向って手を伸ばすから掴まるんだ、いいか
Maria:どこを見ていればいいの?
Michael:どこでもいい、お前から手を伸ばしてみろ!僕が捕まえる
マイケルの手...マイケルの手..あっ!見えたわ
幻想と現実が入り混じっていた
マリアの小さな手の温もりが感じられた
Michael:いいか絶対に離すなよ!
マリアはマイケルの手を強く握り締めた

////Flash////
腕の中のマリアが瞬きをした
マイケルの顔に安堵の微笑みが浮かんだ
Michael:だから1人でウロウロするなって言ったろ
Maria:油断していたわ あんたの周りは危険物だらけね
 でも信じていた、絶対助けにきてくれるって..
Michael:冒険するなら二人で行かなきゃダメだ
マイケルが優しくささやいた
Maria:うん、そうする
マリアが安心したようにマイケルの胸に寄りかかった

マックスはそっとその場を離れロッジの外に出た
森の空気は冷たく、夕闇の空に星が輝いていた
深呼吸をするとリズに電話をかけた
Max:リズ
Liz:マックス、そっちで何かわかった?
Max:いや、まだだ
 その前に事件が起こったから・・
Liz:3人とも大丈夫?
不安そうなリズの声が耳に残った
マックスは心配させないように起きたことを説明した

Max:二人を見ていたら、どうしても君の声が聞きたくなった
 ごめん、マリアを守るっていったのに僕は躊躇した..でもマイケルはしなかった
Liz:それはマリアのためだったからよ
 私が撃たれたときマイケルが止めても、あなたは私を助けたでしょ
 なぜ、そんな危険を冒しても私を助けてくれたのか言ってくれたわよね
 『君だから』って
 マイケルはマリアだから、どうしても助けたかったのよ
 マリアのためならパワーをコントロールできると信じられたからだわ
Max:あんなに真剣なマイケルは今まで見たことなかったよ
Liz:マックス、1人で問題を片付けようと思わないで
 マイケルだけじゃなく私たちは、みんないっしょなのよ
 一人で出来ないことも、きっと可能になるわ
Max:リズ、僕が今なにを考えているかわかる?
 バルコニーの階段を駆け上って君を抱きしめたいよ
Liz:今、駆け上ってくるあなたが見えたような気がしたわ
 私もあなたに逢いたい
Max:明日、一度そっちに戻る
 マリアはまだ動かさないほうがいいかもしれないからマイケルに任せるよ
 でも気になるのはマリアがうわ言みたいにマイケルにロズウェルに戻れと
 言っていたことなんだ どういう意味なのかな
Liz:とにかく今夜はゆっくり休ませてあげて
Max:そうするよ
 もしマリアに何か聞こうとしたらマイケルに殴られそうだ
Liz:そうね...この休暇はいろんな意味でマリアにとって忘れられないものになりそう

電話を切りロッジに入ろうとしたマックスは誰かの気配を感じ振り返った
シルエットが闇の中に浮かんだ
Max:誰だ!?
『僕のことは、もう気がついているんだろう
 ずいぶんいろいろ手間をかけているようだったが』
Max:トレバーか..君はいったい何者なんだ
Trevor:敵ではない 僕のことはマリアに伝えてある
 マイケルをロズウェルに帰らせてくれ
Max:マイケルを?なぜ
 イザベルにキバーがガンダリウムを武器に使おうとしていると言ったそうだが
Trevor:そのとおり、だがまだ阻止することができる
 そのためにマイケルが必要なんだ
Max:だったら、こんな面倒なことをしないで直接マイケルの前に
 姿を現せばよかっただろ
Traver:マイケルがパワーをコントロール出来るならそうしていたさ
 あいつは僕にとっても大事な奴だから
Max:それじゃ、そのためにマイケルを傷つけマリアをあんな目に合わせたのか!?
Trevor:これは、これは..結果のためなら他の者のことなど気にしなかった
 以前のあなたの言葉とは思えないな
Max:前世の自分のことなど覚えてていない
 僕はただのマックスだ
Trevor:それなら余計に君たちが愛する人間を危険から
 救いたいだろう
Max:僕たちの力でなんとかする
Trevor:コパーシュミットの出来事を忘れたのか
 星のことを殆ど覚えていない君たちだけで立ち向かえる相手ではないんだ
 今は、僕を信じてくれとしか言えない
 1人で立ち向かうべきではないことを少なくとも君の周りの人間のほうが
 よくわかっている
闇の中の気配が消え、蒼い蝶が飛び去った


Roswell-EvensHouse

イザベルはマックスの部屋の出窓の前に立っていた
マイケルのマネをするしかないわね

『こんな遅くに1人でどこへ行くつもり?』
窓から外に出て通りに出たイザベルを止めたのはアレックスの声だった
Isabel:アレックス!どうしてこんなところに・・
Alex:君の様子がおかしかったからね
Isabel:見張っていたの、酷いわ
Alex:酷いのはどっちだい?
 イザベル約束したはずだよ、一人で行動しないって
 なぜ1人で動こうとする
Isabel:アレックス、わかってちょうだい
 これは私たちの問題なのよ
Alex:君たち?これは僕たちみんなの問題だよ
 なのに君は自分だけで解決しようとしている
 それじゃ、君が一番嫌っている過去の君と同じじゃないか!
Isabel:違うわ!
Alex:違わない!君はまだ僕たちを信用できないのか
こんなに怒っているアレックスを見たことがない
その感情は怒りよりも優しさに満ち溢れていた
Isabel:ごめんなさい・・
Alex:君のことが心配なんだ
 お願いだから、もう二度と1人で動かないで

アレックスはイザベルを抱き寄せた
その力はイザベルが思っていた以上に力強く暖かかった
私はずっと前からわかっていたわ
アレックス、あなたの優しさの中の強さを
目をそらして来たのは私が怖がっていただけなのね
あなたの真っ直ぐな思いに私が答えられる人間ではなかったから
ΨFrazier Woods LodgeΨ

Max:マイケル、トレバーが現れた
Michael:それじゃ、みんなそいつのせいなのか
マイケルの腕の中にいたマリアが目を開けた
Maria:そうだわ!マイケル、早くロズウェルの町に戻って
Michael:誰かが待っているから、お前さっきもそう言っていたけれど
 誰が僕を待っているんだ?
マイケルはマリアとマックスの二人を見ながら言った
Maria:あの人...あんたのお兄さんなのよ
Michael:なんだって!いきなり兄弟が現れるなんて、そんなこと信じられるものか
Max:彼は事情をマリアに伝えたと言っていた
 聞きたくなかったことまで知らされたが本当のことだと思う
 僕にもお前をロズウェルへ行かせろといっていた
Michael:そいつ今どこにいる!?
Max:テレポートしていたのか映像だけ送ってきたのかわからないが..もういない
 キバーの計略を阻止するためにはお前の力が必要だと言っていた
Michael:僕の?お前の間違いじゃないのか
Maria:マックスにはない力が、あんたたち家族にあるみたいなの
 むずかしすぎて覚えられなかったわ
 一族が戦士だったのはその能力のためだって
Michael:そんなこと知るか、お前をこのままおいてなんて行けない
Maria:そのセリフ、昨日の夜はあたしが言っていたわ
マリアがクスッと笑った
Maria:あたしたち昨日からお互い同じようなこと繰り返していると思わない?
 あたしならもう大丈夫だから
マリアの瞳にはいつもの輝きが戻っていた
Maria:早く行って..このあとは、あんたが直接聞いてこなくちゃダメよ
 大事な恋人はここでちゃんと待っているから...
Max:彼は信じろとしか言わなかった
 真実を知ることはお前のためでもあるんじゃないか
Maria:そうよ、ずっと探していたでしょ
Michael:わかったから・・マリアお前は少し休めよ
マイケルはマリアをそっと抱き上げるとベッドに連れていった
マリアを抱いたままパワーでキルトをよけるとそっと下に降ろした
側に座り乱れた髪をそっと払い、室内の灯りをパワーで少し暗くした
いつのまにかマイケルはパワーを完全にコントロールしていた


Maria:マイケルお願い・・
Michael:ここで待っていてくれるな
Maria:今度こそ、どこにも行かないわ

Max:気をつけるんだ
 危険だと思ったら逃げてくれ
Micahel:思いもよらなかったことだらけだけれど、一つだけいいことがあった
 昨日からのことで不器用な僕も、やっとパワーをコントロールできるようになった
Max:ああ気がついたよ
それがトレバーの計画どおりなのが腹立たしかった
Michael:必ずなにかを見つけてくる、マリアを頼む
マイケルは自分のバイクを置いた場所に走り出した
トレバーが兄弟?
なんの目的で僕と逢いたがっているんだ
マックスが言っていた知りたくないことってなんだ
何もわからない...
だけど、僕の力でみんなを、マリアを守れるとすれば
僕はなんでもする

マイケルはロズウェルの町へ向ってバイクをスタートさせた

Roswell

Alex:じゃ行こうか
Isabel:えっ?
Alex:トレバーのところへ行ってみるつもりだったんだろ?
 僕は1人で行動しないでと言ったけれど、行くなとは言っていないよ
Isabel:アレックス・・・
いつもと同じアレックスの笑顔が違って見えた
わずが半日の出来事でアレックスの全く違った面を見せられているようで
戸惑っているイザベルの気持ちを中断させるようにアレックスの携帯が鳴った

Alex:リズ?
 脱走犯は確保したよ
Liz:マイケルが、もうすぐ戻ってくるわ
Alex:マイケルが?どうして
Liz:トレバーは・・・あの人はマイケルのお兄さんだったの
Alex:嘘だろ!マイケルに兄弟がいたなんて初耳だよ
Liz:マックスも、マイケル本人も憶えていなかったことよ
Alex:そうか..彼らにとって過去の世界のことでも、終わったことじゃなかった
Liz:えぇ、私たちの知らない世界が、たくさんあるみたい
Alex:宇宙って広かったんだよね

Liz:今回の意味を、トレバーから聞いたとしても今のマイケルなら
 勝手な行動はしないはずだってマックスが言っていたの
 私もそう思うわ
Alex:僕も同じだ マリアを泣かせるからね
Isabel:どうしたの?マイケルに何が起きたの?兄弟って?
不安げに詰め寄るイザベルを視線で静止しアレックスは会話を続けた
Alex:それじゃ僕たちは行かないほうがいいね
Liz:トレバーの目的は別にあるとしてもマイケル自身に関する問題だから
 見守ってあげたほうがいいでしょ
 それと明日マリアのところへ行くことにしたの
 すぐマックスの力が必要になるはずだから
Alex:僕がいっしょに行くよ 
 リズ、君これからすぐ出かけられる?
 マイケルの兄弟が突然こんな危ない現れ方をするなんて
 よほどのことだと思わないかい?
Liz:そうね
Alex:だったらマックスには一刻も早くロズウェルの町に戻ってもらったほうがいい
Liz:アレックス、ありがとう
 あなたとイザベルが迎えに来てくれるなら1日早くキャンプに
 行くことになったって言ってもママは信用してくれるわ
Alex:ははアレックス・ウィットマンの人徳だね
 じゃ後で、イザベルには僕から説明するよ

通りの街灯の一つが揺らめいた
Alex:イザベルちゃんと聞いてほしい
 君の予感どおりにトレバーは敵ではなくマイケルの兄弟だった
Isabel:そんなこと・・
Alex:僕とリズがロッジへ行ったらマックスはこの町へ戻る
 トレバーから何を知ることになるかはわからないけれど君たち4人は
 いっしょにいるべきだ
Isabel:でも、マイケルは1人で彼に逢うつもりなんでしょ
Alex:いつまでも子供のままじゃいられない
 マイケルだって気がついているよ

アレックスが大人に見えた
成長期の男の子は眠っていても背が伸びるという
変化を見せ始めたのはマックスたち4人の異星人としての
意識だけではなく誰もに現れる変化だった普通のことなのだ



ヘルメットを脱いだマイケルはトレバーの宿泊しているホテルを見ていた
 なんて言えばいいんだ・・・
 そんな心配しなくていい
困惑するマイケルの気持ちを見すかしたように声がかけられた
Michael:あんたがトレバーか
Trevor:感動的な再会とはいいがたいな・・
Michael:当然だろ 僕はあんたの存在すら覚えていない
Trevor:その上、手段を選ばずだったしな
Michael:なんのことだ?
Trevor:マックスから聞いていないのか ふっ、人間のもつ優しさというやつか
Michael:僕を狙ったのはあんたなんだな!
 そしてマリアを引き込んだ マックスが聞きたくないことまで聞かされたというはずだ
 はっ、どこにいても僕の人生は最低だな
Trevor:そう思われてもしかたがない
 お前の能力を急激に目覚めさせるためには仕方なかった
Michael:仕方ない?多少の犠牲は気にするな、か
 ナセドの時もそうだった
 故郷へ帰ることが幸せだと思っていたなんて、とんだ幻想だった
Trevor:僕のことは、どうとでも思うがいい
 しかし、ここで感情的に対立している時間はない
 キバーはあせっている
 奴の策略を阻止し星に平和を取り戻すとすれば今なんだ
Michael:それが僕のためになるとでも?
 お断りだ 僕はもう帰る
Trevor:地球の運命がお前の手に掛かっているとしてもか
Micahel:なに!?
Trevor:ようやく聞く気になったようだな
 UFOセンターに行こう、ラレックを呼んである

動き始めた新たな宿命が姿を現し始めていた

= to be continued =