#8 Brave Heart

High Speed Turn

Larek:キバーの地球到着は30分後だろう
Trevor:了解、あっちで時間を調整するよ
 マックス、もう一度言っておく
 決着をつけるのは君だ
 奴の能力を恐れることはない
 だが今まであった異星人たちの全部の能力を
 数倍持っていると思っていてくれ
Max:聞かなかったことにするよ
Michael:頑張れよ
Max:あぁ、お前もな
マイケルとトレバーの姿は装置の光の中に溶け込むように消えていった





Isabel:マイケルは..どこへ?
Max:僕たちの故郷の星へ向ったんだ..
Tess:戻ってこられるのよね
マックスはラレックを見た
Larek:君たちの星でなら、こう言えばいいのかな
 すべては運命の神の手に委ねられた...
 その後は彼が望む道を選択するだろう
 とにかくスタートのボタンは押された 後戻りはできない

あのとき・・僕がリズの運命を変えてしまったとき
彼女はどんな風に感じていたのだろう
マックスは改めて二人の運命的な出逢いを思い出していた
仲間だけでなく僕にこの世界を守れるのか?
マイケル...教えてくれ お前は、どうやって吹っ切れたんだ
豚じゃなく、こういうときは何を見たと思えばいい?
スローモーションで動くリズの映像を考える自分にマックスは苦笑した
Max:リズ、僕は...戦う前にもう一度君に逢いたい

Larek:叶えてやろうか? その望みを
Max:えっ!? 僕の心の中を覗いたのか?
 君には、そんな能力はないはずだ
Larek:そのとおり、だが人間というのは面白いほど心の中が表情に現れる
 実に単純な生命体だからわかるのさ
 我々の顔に表情などない...冗談だ
Max:君でも冗談なんていうんだ
Larek:おい、ユーモアのセンスなら堅物なザンよりあった
 信じないだろうが
Max:いや、緑色じゃないことは確かだし根本的には僕らとそんなに変わらないと思っていたよ
Larek:意外と言うな、遺伝子の一部が地球人のくせに
 マイケルとマリアは違う手段を使ったようだが、もっと簡単な方法がある
マックスはマイケルの晴れやかな表情の裏にあったものに気づかされた

Max:あと30分しかないのに彼女に逢えるのか?
Larek:あぁ出来る イザベル君はどうする?
ラレックは彼らの後ろで二人を見ていたイザベルに声をかけた
Isabel:私たちの運命は兄さんやマイケルの手に委ねられたのかもしれないけれど
 自分のことは自分で決めたい
 私の過去の因縁になんて負けたくないわ
イザベルの脳裏に浮かんだのは初めてみせたアレックスの真剣に怒った顔だった
アレックス・・一人で解決しようとするなと言ったわよね
Isabel:お願い、私をアレックスに逢わせて

Kyle:なぁ、いつからあの二人そんな関係になっていたんだ?
Tess:どうして、つい最近ここへきた私に聞くわけ?
 どうせ、マックスやマイケルと同じ最初からでしょ
 遺伝子の中に残された使い古しの記憶よりロズウェル新しい記憶の方が
 3人にとって自然なものなんだわ
 しかたがないわね 私はあなたで我慢してあげる
Kyle:我慢ってなんだよ

***
Daff:あなたは行かなくていいの?
Valenti:いつまでも助けが必要では困る
 あの子達が解決できるなら...いや、妙な分別がついた大人が
 口を挟まない方が今は必要なことに思える
Daff:それ常識とか保身とか?
 どうやら私達の助けは必要なかったみたいね
 片付いたら、いっしょに飲まない?
Valenti:忘れなければいけないことを、また増やしてしまいましたね
Daff:そうね 私も分別のある大人の一人だから

5人はセンターの地下にいた
Larek:ここが今UFOセンターとは皮肉だよ
 君たちの乗ってきた船が墜落したあと軍が
 回収した物の一部がここに保管されていたおかげで
 機材を運ぶ手間が省けた
 彼らにとってガラクタに見えても宝の山だった
 君たちが見つけたロッジと、ここにルートを開くことが可能だ
Kyle:そんな近道があるなら教えてくれりゃいいだろ...
Larek:そうだったな
ひとり言を聞かれたカイルはあわてて首をすくめた

Larek:時間というのは不思議なものさ
 面倒な説明より時間をかけた方が効果的だっただろ
 そして今は短縮することが必要というわけだ
 マイケルと同じように、君の力をパワーアップさせるのは彼女の存在なんだろう


Liz:マイケルは行ったのね?
Maria:うん
Alex:大丈夫だった?

Maria:帰り道は忘れないって
 感触が今も残ってる...
 ほんとは行かせたくなかった・・だけど
 あたし間違ってなかったよね

答えてあげたくても確信がない
どうしよう・・・マックスと、もっと話すことがあったのに
この2日間に起きたことで必死で私たち二人のことは何も話していなかったわ
これからマックスに何が起きるかもわからない
もしマックスに何かあったら私も生きてはいられない
あなたが私を助けてくれた日から、あなたは私の中の一部に・・
いえ私もあなたの一部になってきたはず
あなたを一人で行かせたくはない

イザベル、いまごろ君は何を思っているのかな
マイケルが戦いに出かけ、マックスも...きっと心細く感じているだろうね
でも君は1人じゃないんだよ
君はまだ僕のこと頼りない奴だと思っているのかな・・僕は君を守りたい

想いは遠く離れたロズウェルに届いていた
洞窟への入り口がある貯蔵庫が輝いた

リズ!アレックス!マリア!聞こえたら降りてきてくれ
マックスの声だった
リズは入り口に駆け寄ると叫んだ
Liz:マックスどうやってここに来られたの?
Max:違う、僕はロズウェルにいる
 今、そのロッジとUFOセンターの次元を変化させているんだ
 地下へ降りると、そこに宇宙のようなホログラムが見える
 その映像の中を真っ直ぐ進むんだ
 それがここへの通路になっている リズ、早く!もう時間がない
Liz:でも...無理だわ マリアが・・
 マリアはまだ動けない
Alex:リズ先に下りるんだ マリアは僕が連れていく
Maria:いえ二人で行って
Liz:何言っているの ここにあなた1人を残せないわ
Maria:一人じゃないわ マイケルがいっしょにいる
 現実に、どんなに離れたところにいても
 こんなにあいつを近くに感じていることはないわ
 あたしはマイケルと約束したの
 戻ってくるまで、ここで待っているって
 リズ、人のことを心配している暇はないのよ
 あたしはマイケルに逢いたかった どんな危険だとしてもよ
 だから、あなたにも後悔してほしくない アレックスあんたもよ!
 二人とも早く行きなさい!
マリア...
アレックスがリズとマリアの肩を抱いた
今一番大事だと信じることを選択しよう

リズとアレックスは洞窟への階段を急ぎ、ホログラムの靄の中を走り抜けると
逢いたかった人の姿が見えた
残されたマリアはマイケルの無事だけを祈っていた


Larek:まもなく時間だ

敵はどんな風に姿を現すのか
『守りたいものが誰にでもある』
マイケルが残した言葉が耳に木霊していた



Max:ラレック...この方法しか本当にないのか
Larek:マックス諦めろ 計画はもう動き出している
 過去の惨劇を繰り返したいとは思わないだろう
Max:でも、それは力で解決しようとしたために
 起こったんじゃなかったのか
Larek:ふ...相手は理屈や感情論が通じる場合だったらな
Max:同じ星の仲間なのに、なぜ争う...
Isabel:キバーに人間のような感情を求めても無駄なのよ
Larek:彼女のいうことが正しい
 我々はキバーの言うなりになってきたのではない
 連邦の代表が集まり何度も模索してきた
 それを、ことごとく壊したのがキバーだ

時間が刻々と刻まれていた
Tess:迷っていたからリズを呼んだんじゃないの?
 ほら、二人で結論を引き出してきなさい
テスが二人を階上へ追いやった

Kyle:頭でも打ったのか?
 マックスは君にとっても宿命の相手だったんだろう?
Tess:全然違う環境で生まれたのに同じ人生をもう一度なんて
 最初から無理なことだったのよ
 イザベル、私がこの町に帰ってきたとき
 仲間なはずの、あなたたち3人は感じていた絆をすぐに感じてくれた?
Isabel:ごめんなさい...
Tess:過去とは違う人生を選ぶことの方が自然なのよ
Alex:いつか故郷の星に戻る日が来てもそう思えるのかい?
アレックスの問いはテスだけじゃなくイザベルにも向けられていた
Isabel:えぇ言えるわ、今なら断言できる
Tess:負け惜しみじゃなく私も言えるわ

Valenti:私のことは誰も思い出さなかったのか
Kyle:父さん!なんでここに..あっ
Valenti:約束の10分はとっくに過ぎたぞ
腕組みし渋い顔をしている保安官のそばにテスが駆け寄った
そしてカイルと保安官の二人の腕にテスは手をかけた
どこにでもいる普通の家族がそこにいた



Liz:マックス..私は今も戦ってとは言えないわ
Max:僕だって望んでいない
 でも、僕たちが知らなかった長い時間をかけ
 彼らは交渉を続けていた
 その結果の答えがこれだとしたら
Liz:戦うしかない
Max:僕が守りたいのは、君たちだから
Liz:故郷の星の人たちよりも
Max:僕たちの故郷はここだよ
いつもと変わらない微笑と共にマックスが差し出した両手にリズは答えた

私はいつも差し出されたマックスの手に導かれてきた
今、私が彼のためにしてあげられることは
リズは手をつないだまま床に座ると彼を包み込んだ
Liz:マリアに言われたの
 あなたが普通とは違うことを知ってから恋をしたって
 でも、私はいつも不安だったわ
 あなたがいつか私の元からいなくなってしまうこと
 その時が来たら私はいっしょには行けない..
 その時が来たら、あなたを止めることもできない
 あなたの気持ちはわかっていても、ずっと怖かった
Max:僕は僕たちのせいで人が傷つくのを見たくなかった
 それは、ただ目を背けていただけかもしれない

Max:僕は自分がリーダーなんて思っていない
 でも決着をつけるのが僕だとマイケルは言った・・だから戦うよ
 君といっしょに広い世界を見たくなった
 僕は僕の本当の人生を生きたい
マックスは体を起こし、リズの瞳を見つめ彼女を腕の中に包んだ
Liz:いつか..ね
Max:いつか?
Liz:いつか、あなたが故郷の星に行く日が来たら
 絶対、私もいっしょに行くわ

マックスは心の中の迷いを捨てた
僕なりのやり方をすればいい
何もせずに最初から諦めるのは、もう止めよう
二人は手をつなぎ未知への戦いのために階下へ向った


Michael:なぁ、地球とは違うのはわかっているけれど
 ここへ来てから太陽..じゃないか、ここは
 とにかく衛星が2回転はしてるよな
 いったい、どれくらい時間が過ぎているんだ?
Trevor:地球の時間では20分かな
Michael:たったそれだけか!?
じれったい気持ちが湧き上がっていたマイケルは唖然としていた

Trevor:そろそろ行動開始するか
 ラレック、そっちの準備はいいか?
Larek:あぁ全員そろっている GOシグナルはいつもどおりグリーンだ
Trevor:1分後に攻撃を開始する トラップ1のスタートだ!
Michael:トラップ?
Trevor:勝敗を50%に保ち、劣勢な状況に気づかずキバーは地球へ向う
 お前が一番得意だった作戦さ
Michael:奴を騙すのか、面白い なんだかネオになった気分だ
Trovor:なんだそれは?
Michael:地球のひとり言だ...
 上等!さっさと片付けよう!

Torvor:口ぐぜが出たか これだけは忘れるな
 お前が地球ではパワーをコントロール出来なかったのは
 能力を劣化させないよう遺伝子に組み込まれていたからだ
 ここでは制御の必要はない

Michael:思う存分使えってことか
Trevor:ただ戦闘が始まったら、他の能力は失うと思え
Michael:やられたら終わりってことだな
マイケルはニヤリとした

惑星での時間は違う姿のマイケルを同胞に復活したラスと認識させていた
仲間はマイケルの指示どおり行動してくれた
パワーはコントロールしなくてもいい
でも僕は戦いに戻ることで人間性を失いはしない
僕を待っている人たちがいるから..
トリニティーって3つ一組ってことだっけ..他の3人のことかな
いやお前と僕と楽しい休暇のことだな
もうすぐ帰るよ、マリア




センターの地下が宇宙の一廓へ変わっていった
Larek:来るぞ!
Max:リズ、下がっていてくれ!


Kiver:久しぶりだな、ザン
 おや?ヴィランドラじゃないか
 出迎えてくれるとは嬉しいね
 これで君も連れて帰れるな

Isabel:二度とあなたの勝手にはさせないわ
Alex:気にしないで、あいつの作戦だよ
アレックスが力づけるようにイザベルの手を握った

Max:君の目的はなんだ
Kiver:前回の会議のときに出した条件を君は断った
 次の条件は悪くなるのが当然だ
 忌々しいことに過去の人の君をいまだに崇拝している民衆がいる
 君にはいっしょに星へ戻ってもらう
 同胞の前で権力の譲渡を宣言をし、私を後継者と認めさせろ
 もちろん、グラギリスとヴィランドラは頂こう
 他のお仲間は必要ない
Tess:相変わらず自分勝手な条件よね
Kiver:一人足りないようだが、どうした?
Alex:事故でケガをした
すかさずアレックスが答えた
Kiver:自分の身も守れないのか、情けない生物だ..
 まぁ抵抗するものが一人でもいないのは好都合だ

Max:なぜ、それほど権力にこだわる
 5つの惑星がおのおのの代表を出すなら
 権力も分割すれば良いことじゃないのか
Kiver:昔、その権力を手にしていた者が言うこととは思えない

Max:同じじゃないからだ
Kiver:ふ...ならば力で決着をつけるしかない
 3対1は不公平だろ ヴィランドラ、僕たちは愛し合っていた
キバーの甘ったるい言い方にイザベルはゾッとした
Max:イザベルに手を出すのは止めろ!お前の相手は僕だ!

不意をついたキバーのパワーでマックスは
壁に叩きつけられた
Max:保安官!
 みんなを早く外へ連れ出してください!

Larek:マックス!ここは元防空壕だった
 外部に被害は出ない
ラレックがマックスの心配に答えるように叫んだ
Trevor:ふん、ザン!いいか三度目はないぞ
 お前の最後を見えるようにしてやろう
キバーは地下室の天井に半透明の窓を開けた
そこには脱出したみんなの姿が見えた
Max:お前の好きにはさせない

***
パワーを比較すれば明らかにマックスが不利に見えた
Liz:どうしよう、私たちに何かできないの!
Isabel:パワーを兄さんに届けられれば
Tess:パワーを結合させることはコパーシュミットでやったわ
 イザベルあなたの力を使ってみましょ
Kyle:どうするんだ
Tess:夢よ、マックスの意識下から送り届けるの
 リズ、カイルあなたたちにもマックスから与えられたパワーがあるはずよ
 イザベルと手を重ねて!早く!
4人は手を重ねあい、イザベルは戦うマックスに向い意識を集中させた
『兄さん!受け取ってちょうだい!』

***
Michael:トレバー!シグナルは?
Trevor:まだレッドだ!
計画どおりに進んでいるとすれば、まもなくシグナルはグリーンに変わるはずだ
Michael:よし!フルパワー!逃げる者は追うな
マイケルに指示がグループに伝わり、キバーのグループを次第に追い詰めていった
Trevor:変わったな、お前..
Michael:敵であっても無闇に命を奪う必要はないだろ

***
マックスは体の内側からパワー満ちてくるのを感じていた
一人ではない複数の力が、戦いを続ける体力を呼び戻した
Max:今までお前が手にしていたものは権力ではない
 信頼されることのない力は無に等しい
Kiver:たわごとを言っていられるのも今のうちだ
Max:それを何人を犠牲にして手に入れた!
パワーが激しくぶつかり合う

Kiver:まだ力が残っているのは意外だな
Max:僕には守りたいものがある
 そして僕自身も守られたいるんだ!

***
Trevor:マイケル!グリーンだ!
マイケルの脳裏にはシュミレーションとは全く違った映像が浮かんだ
Michael:トレバー!パワーを僕のパワーとクロスさせてくれ!
二人のパワーがクロスした途端、輝くラインが絡みあい数倍の力となってキバーを固定した
Michael:ターゲット、ロック!マーックス!!


マックスとの戦いに集中していたキバーに気がつく時間はなかった
一瞬にして巻き起こる暗雲の中に吸い込まれるように姿を消した
光の去ったセンターに静けさが戻っていた
マックスは足元に転がっている黒い固まりを見下ろしていた
これで終わってほしい・・
マックスが放ったパワーは床に小さな黒い焼け焦げを残していた
マックスは背を向けその場を離れた
***
Michael:意外に簡単だったな
Trevor:今まであんなことしたことがない
 あれは、なんだ?
腕を組みながら成り行きを見ていたマイケルが言った
Michael:さぁな、もう忘れた..この先使うこともないだろう
次の瞬間それがマイケルの単なる希望だったことに気づかされた
トレバーの目にマイケルの背後に迫る敵の姿が映った
Trevor:マイケル!後ろだ!
声が届くのが一瞬遅かった
光が去った後に残されていたのは横たわるマイケルの姿だった

= to be continued =